IT初心者のための仮想化のメリット - (物理環境の課題編)
今回は2017年 vExpert Advent Calendar 第2弾です。
今回は、初心に帰りまして、仮想化のメリットをよりわかりやすく説明出来ればと思います。
特に物理サーバー、物理システムとの対比ということで大きく2つの利点を挙げたいと思います。私個人が特に感じる仮想化の利点は次の通りです。
- システムのデプロイの時間短縮
- 物理的な設置作業が楽になる
1. システムのデプロイの時間短縮
例えば、物理システムに対してOSをインストールするのには通常30分~1時間くらいの時間がかかります。(勿論OSの種別やハードウェア構成により時間は依存します)
但し、ここに至るまでには次のような下準備があって初めてインストール作業が開始出来るわけです。
- システムが接続されるネットワークデバイス、ストレージデバイスとの互換ドライバー、ファームウェアのバージョン確認
- 上記で確認をしたデバイスドライバー、ファームウェアの準備、ダウンロード
- OS及び上記の更新ファイルを含んだデバイスの準備
- 導入作業を行う場所が、デバイスの持ち込み制限がある場合は持ち込み申請
- OSインストール前に、互換性維持のためにハードウェアのファームウェアやBIOSの更新
まず、システムに対する互換性というのを確認しないといけません。
- OSとサーバー
- OSとNIC、ストレージアダプター
- OSとSANストレージ
以上のように物理サーバーごとに例えば次のように複数の点においての互換性を気にする必要があります。例えば社内に50台サーバーが存在する場合は、最大で50回この作業を行う必要があります。(Windows Server, Linux, などなど)
例えばWindows Serverに対し、Dell PERC H730PというRAIDコントローラーの互換性を調べる場合は次のページを確認します。
Windows Server Catalog - for Dell PERC H730P
このような作業を、サーバーに搭載されているデバイスの数、デプロイするサーバーの数だけ行う必要があります。インストールするOSの種別が多ければ多い程、調査に要する時間は比例的に増えていきます。
仮想化を採用してしまえば、VMware vSphere ESXiに対しての互換性をチェックしてしまえば、確認にかかる時間は大幅に短縮されると言えます。
VMware Compatibility Guide - System Search
メディアなどの記憶媒体は、昨今セキュアである環境への重要性が高まっている状況では持ち込み許可が簡単には降りないケースも珍しくはありません。
特にOSメディアは、OSインストール時にフォーマット(ストレージデバイスの初期化)が行えてしまいますし、それによってデータロストなどが発生してしまうなども怖いですよね。
更には、ファームウェアやドライバーインストールなどは、ハードウェアベンダー、デプロイされているオペレーティングシステムによっても更新手法が異なりますので、ここでも手順書の作成やシステムごとの違いにより、異なる手順を覚えるのも時間的にロスが大きくなります。
最近では、どのベンダーもOSが未インストール状態でもファームウェア更新が出来るような仕組みがハードウェアに組み込まれていたりします。
※Dell EMCの場合は、Lifecycle Controllerと呼ばれるUEFIベースの機能によりBIOS、NIC、HBAのファームウェアなどの更新が出来ます。
ここまでの内容について言えば、ESXiを導入する際にも、ESXi向けに同様の確認や準備は必要とは言えますが、仮想化の場合、ゲストOSレベルでのこれらの調査は不要または限定的な状況に於いて必要となるため、大幅な準備時間の短縮になると言えます。
また、忘れてはならないのは仮想環境には"クローン”や”テンプレート”という、数クリックで同一のシステムをデプロイ出来てしまう機能もありますね。
2. 物理的な設置作業が楽になる
この点について言えばシンプルです。
仮想化=物理サーバーの台数縮小化と言うのは有名なメリットです。
そして、物理サーバー環境における典型的な課題は次のようなイメージです。
見ての通りですが、大量のケーブルです。
当然ながらこれらよろしくない例です。
ケーブルの壁が、排熱の妨げや保守作業の妨げになります。
以前に私がコールサポートエンジニアだった時代に、お客様から"背面がケーブルだらけでケーブルの抜き差し作業が出来ません”と言われたことがありました。
少し話を元に戻しますと、物理サーバー1台辺り、例えば次のようなケーブルが存在するわけです。
ストレージの利用有無と性質次第でケーブルの種類は変わりますが、例えば電源装置が冗長化されているような環境では、2本の電源ケーブルが登場するなど、本数も1台のサーバー辺りでも複数本になります。
ケーブルが増える=差込口についても考慮要となるわけですから、ネットワークスイッチもポート数が足りなくなったり、あるいは電源についても同様のことが言えます。
また、システム自体は重量もある程度あるため、ラックへの搭載作業も基本的には複数名で行うことが大前提となります。
Dell PowerEdge R740xd 設置および操作マニュアル
仮想化をすることで、設置台数を減らせるため、こうした作業工数も減りますね。
また、台数が減る事で次のような利点も生まれますね。
- 排熱が減るため、サーバールームの空調費用がコストダウン
- 電源利用元に当たるサーバーが減るため、電気代が減る
- 物理サーバーが減るため、保証管理対象が減る
- ラックに搭載する機器が減るため、ラック設置時の予測積載量が低減する
仮想化をすることで単純にコストが減るとは言いますが、具体的にはお客様の視点ではこれらの利点があるということですね。
今回はこれで以上となります。
仮想化は確かに素晴らしく、今後もITインフラを支える標準的なシステムとなると思いますが、これは裏を返せば、物理サーバー環境に於ける問題提起があったからこそ生まれたものだという裏付けにもなりますね。
勿論物理サーバー環境にも良い点はあると言えますので、それぞれの性質を理解した上で、仮想化が適する環境には積極的に仮想化を利用して頂きたいと思います。